先週、学校の裏手にある美容院へ散髪に行きました。そこは韓国人が経営する美容院で、1年前から定期的に利用しています。1回あたりのカットの費用は、80元(1,400円程)です。
5回分を一括で払うクーポン券を購入すると、60元(1,000円程)で利用できます。ただ、上記価格は中国人スタイリストの価格で、韓国人にカットしてもらうと、価格がかなり上昇します。私は湖北省出身のお兄ちゃんにカットしてもらっています。先日も、美容院がある2階へ続く階段を登りきると、いつもの兄ちゃんが笑顔で出迎えてくれました。
幸い、私以外に客はおらず、早速、椅子に座り、理髪作業に取り掛かりました。彼は私の周りでせっせと準備しながら、
彼の話によると、先週は彼女と一緒に湖北省へ帰り、婚姻届を役所へ出しに行っていたのだそうです。私がそれを聞いて、すぐに「おめでとう」と言うと、彼はさほど喜んでなさそうでした。
髪を切ってもらいながら、いろいろ話すうちに喜んでいない理由がわかってきました。彼の結婚相手は広西省出身の人で、7年間お付き合いしたそうです。そして、挙式はせずに、法的な手続きだけをして、結婚生活を始めるそうです。
理髪作業に取り掛かり、しばらくしてから、彼が小さな声で、こんなことをつぶやきました。
彼の話によると、どうやら、婚約届けを出す前に彼女が妊娠してしまったため、政府に違反金を払わないといけないのだそうです。
婚約届けを役所に出す時点で、妊娠3ヶ月未満であれば、違反金は発生しませんが、妊娠3ヶ月以上だと、違反金が発生すると言っていました。この違反金は、違反当事者の収入や立場などによって決定されます。彼が納入する違反金は、2,000元(34,000円程)です。
ちなみに、昨年は映画監督のチャンイーモウに隠し子が、複数いることが発覚し話題になりましたが、彼に課せられた違反金は、なんと748万元(1億3,000万円程)です。
違反金が課せられるケースは2種類あるそうです。
- 婚約届けを出す前に子供をもうけた。
- 一人っ子政策に抵触した。
彼の場合は①であり、チャンイーモウの場合は②です。一人っ子政策は1982年から始まった政策ですが、現在では、一人っ子同士が結婚する場合に限り、漢民族でも子供を二人もうけることができるようになりました。
一方、日本では、罰金を払わなくていいどころか、出産育児に関する手当て、補助金、助成金は相当充実しており、生めば、それだけ多くの福利を受けることができますから、中国と全く反対です。
ちなみに冒頭の私のスタイリストには、兄弟がいるため、二人目をもうけることはできないそうです。あくまでも、二人目をもうけることができるのは、一人っ子同士に限られます。
ですから、彼のお父さんも、二人目をもうけた際は、違反金を払ったそうです。彼の話によると、特に、一人っ子政策が実施された時は、当局の取り締まりが非常に厳しく、違反金が払えない家庭に対しては、当局が家に押し入り、家の財産を没収したり破壊したりと、とても人道的ではなかったそうです。その時と比較すれば、今では大分ましになったと言っていました。
同じ行動に対しても、
ある国では人口増加促進のため助成金を付与する。
もし、チャンイーモウも日本に生まれていれば、1億円という違反金を払うどころか、反対に助成金を受け取ることができました。日本人であれ、中国人であれ、自分の意思に関係なく、ある時、急にある枠組みの中に産み落とされその枠組みの中で生きなければなりません。
キリスト者は、人間は、ただ、神の意思によって、その枠組みの中に産み落とされた。と信じます。
その強大なとても逆らえない枠組みや、その国の法律、さらに習慣、風習の中でもがきながら、天を目指して生きる者だと思います。もちろん人が何を言おうが勝手ですが、あるキリスト者は、安易に「私は完全な自由を獲得しました!」と言ったりしますが、非キリスト者に対して、かなり誤解を招く表現だと思います。
もちろん、その人の内的な部分、霊的な部分では自由を獲得したのかもしれませんが、肉体、精神も含めた完全な自由など、この地上にはないと思っています。愚か者みたいですが、天を目指して生きています。
神が人と共に住み、人は神の民となり、神自ら人と共にいまして、人の目から涙を全く拭い取ってくださる。もはや、死もなく、悲しみも、叫びも、痛みもない。さきのものが、既に過ぎ去ったからである。
カナンの地は今日も輝いています。