異文化交流は、ビンゴゲームをしたり、オレンジジュースを飲むことだけではありません。また、ワイワイガヤガヤ、カラオケしたり、スピーチすることだけでもありません。私は、同僚の一言を聞いて愕然としました。
事の発端は一通のメールでした。送り主は先週の日曜日、初めて教会で出会った一人の姉妹です。簡単な自己紹介を経て、彼女もバベルの塔の住人であることが分かりました。彼女はB棟、私はA棟に住んでいます。
関係は全く深くありません。まず、出会ってから4日しか経っていませんし、そしてその間、教会の集まりがあった時に、帰り道が同じだったので、一度だけ一緒に帰っただけでした。
電気を消して寝ようと思っていた時、午前0時30分にメールが届きました。メールの内容は、急に歯が痛くなって、痛くて寝られないから、意識を痛みからそらすために連絡したとのことでした。
私が返信するまもなく、次々にメールが送られてきます。ピコンピコンと鳴り続けます。内容は支離滅裂で何が言いたいのか分かりません。
歯の治療を先延ばしにしてたこと。
東莞の病院は診察料が高すぎる。
神に祈ったけど痛みが消えない。
そのほか、亡くなったお母さんの話。
コンテキストもなにもありません。
深夜に及んで、どうしてこんな対話に付き合わないといけないんだと思いながら、当たり障りのない返信をしました。すると、また次々と、ピコンピコンと悲哀感に満ちたメールが送られてきます。冷たいかもしれないが、あなたのためにお祈りするから、失礼しますと連絡しました。
変な人の周りには変な人が、集まってくるのかなと思いながら、しぶしぶ布団から出て、彼女のために3分だけお祈りしました。そして、ちょうどその時、日本から歯痛止めの薬を、持ってきていたことを思い出しました。ロキソニンか何かだったと思います。
念のため、彼女に歯痛止め薬が必要かどうか確認しました。
歯痛が解消されず、必要と連絡が来たので、急いで着替えて、A棟とB棟が連結している4階まで降りてゆき、彼女に薬を渡しました。
この時点で、時計の針は午前2時をさしていました。
やれやれと部屋に戻り、着替えて、再び布団に入ります。
午前2時30分、再び、携帯がピコンピコンと鳴り続けます。
それに対して、私は効き目が出るまで時間がかかるから、もう少し待ってと連絡しました。
するとすぐに、
私は文面をそのまま受け止めてしまい、恐れに似た感情が沸き起こってきました。その後も、立て続けにメールがピコンピコンを鳴り続けます。情緒不安定か精神疾患者かと思い、わたしも馬鹿なので歯が痛いのか情緒不安定なのか、どちらかと聞きました。彼女はあくまでも情緒不安定ではなく、歯痛をそらすための冗談だと言いました。
それに対して、私は激怒。深夜に及んで、そんな失礼な冗談があるか。
彼女のことを本当に心配して、平日の深夜にもかかわらず、薬を持って行って行きました。もうあなたとは話したくないと連絡し、やりとりを終えました。
その後、謝罪と誤解を解くためのメールが数通来たが、私はもう眠気と精神的な疲れで理性的な判断が出来ないから、もう寝ると伝えて眠りにつきました。
時計の針は既に午前3時45分をさしていました。
翌朝、目を覚ますと頭の片方だけが、ズキン、ズキンと鈍くうずきました。ほとんど寝たような気がしませんでした。そして、通常通り出勤し、昨晩のことを中国人の同僚に相談しました。
メールを部分的に見せて、相手は果たして精神病なのか、また相手の真意は何なのかと聞くと、まさかの冒頭の発言。
「もっとも歯が痛かったのは事実だと思うけど、それを紛らわすために、わがままを言って、だだをこねているだけだよ。」
それを聞いて、驚きというよりも、悲しみに似た気持ちに襲われました。中国語の文字から、相手の気持ちを読み取れなかったことによる自分の中国語の能力に対する一種の情けなさであり、昨晩、睡眠を削って、奔走した自分が哀れに思われたからです。
もちろん、今回の誤解の原因は、出会って、まだ4日しか経っておらず、彼女のキャラクターや表現方法を、十分理解していなかったこともあげられると思います。
原因はどうであれ、それでも、郷に入れば、郷に従え。
たとえ彼女の冗談が受け入れられなくても、中国にいる以上は、それを受け入れなければならなりません。急いで、昨晩の彼女に連絡、謝罪し、ことなきを得ました。
キリストがあなたがたを受け入れてくださったように、あなたがたも互いに相手を受け入れ合いなさい。
カナンの地は今日も輝いています。