中国のキリスト教の政治問題について

家の教会の政治的な問題

家の教会に関する宗教問題を政治問題にして論じようとする人たちがいる。
キリスト教の政治問題に関する論調は主に二つある。

欧米諸国が、中国を変革するために、キリスト教を戦略的な道具として使おうとしている。
キリスト教の道徳性とその精神、また、その巨大な組織は中国の民主化を促進してしまう。

台湾国民政府の元行政院院長の陳履安氏は、アメリカには、ある特定の国家に対して、特別に5つの委員会を設けていると話しており、その中の一つである宗教委員会は、宗教を利用して、イデオロギーや西欧諸国の価値観を広め、社会の隅々までにその考えを浸透させることを目的としていると指摘している。

台湾国民政府は当初、この戦略を知っていたので、民間宗教を利用して、キリスト教の伝播を阻止しようとしたそうである。このように、キリスト教を政治利用する西欧諸国を警戒し、中国共産党の幹部たちは「キリスト教」という言葉に敏感で、この話題自体をタブー視してきた。その結果、具体的な議論が進まず、政策決定が遅れてしまったという事情があると言われている。

これら、キリスト教の問題が政治問題とされたことに対して、中国社会科学院の于建荣氏は以下のように言っている。

欧米諸国が、中国を変革するために、
キリスト教を戦略的な道具として使おうとしている。

キリスト教がもつ教義から判断した場合、特定の人や組織がキリスト教を政治的に利用することは容易ではないと言った上で、そのために必要な最低条件に、まず、中国のキリスト教徒がキリスト教の教義を正しく理解し、その教義に従って正しく宗教生活を営むこと。が重要だと述べている。

そして、キリスト教徒は自国の国民や国家に対して、大きな責任を抱えていることをしっかり自覚し、一方で、政府や国民は、中国の数千万にも及ぶ信徒のその知能、聡明さ、判断力を信じなければならないと言っている。

キリスト教の道徳性とその精神、
また、その巨大な組織は中国の民主化を促進してしまう。

表面的にはキリスト教のもつ高度な精神性や道徳性を肯定しているが、実際は中国共産党の家の教会に対する恐怖感を増加させているだけであり、長期的に安定した社会発展を目的とした場合、民主化は教会にとっても政府にとってもメリットがないと言っている。

特にこの指摘は、西欧社会の歴史背景、文化、文脈の中だけで成立するものであって、歴史的にずっとエリート官僚による中央集権体制を敷いてきた中国にとって、西欧諸国の民主化の考えをそのまま中国に持ち込んで適応することはできないと言われている。

実際、キリスト教を金儲けの手段や民主化促進のために利用している人はほんのごく一部で、大部分の人がただ純粋に騎士スト教を生活の一部、信仰の対象、精神のより所としているだけである。

このような意味において、于建荣氏はキリスト教は決して、帝国主義が中国政府をコントロールするための戦略的武器なることはなく、また、民主化の道具に成り果てることもないと言っている。信教とは、心の体験であり、その体験の中から見つけ出す一種のより所であり、世の中のすべてのことは神によって動かされていることを信じることにすぎないからである。

最終的に于建荣氏は論文の中で以下の三つの提言をしている。

政府は宗教を政治問題にしないこと
エリートは教会を道具として利用しないこと
民衆はキリスト教徒を異教徒扱いしないこと

中国の家の教会は、文化大革命期、政府による迫害や圧力だけでなく、人々の偏見の目にさらされてきた。また、さらにキリスト教そのものがもつ問題ではなく、一方的に、

帝国主義の戦略的武器
民主化を促進する道具

と言われ、宗教の問題が政治の問題となり、危険視され、タブー視され、対策が放置されてきた。いつの時代でも政治利用を試みようとする者、金儲けの手段として利用する者、また、キリスト教徒にに対して偏見や差別的な態度を持つ者は、必ずいる。そのため、キリスト教徒は純粋な信心だけを大切にし、利用されないようにする。

于建荣氏が言っているように、信心だけでなく、知能、聡明さ、判断力を身に付け、教義を正しく理解し、教義に従って正しく生活し、社会からの信用を勝ち取ることによって、最終的に中国のキリスト教の政治問題が解決されるのではないかと考えられる。