政府は家の教会を合法化する方法として、“三自愛教会の組織下に入ること”を条件としているが、現状、この条件を受け入れ、合法化に踏み切っている家の教会は少数である。
家の教会が反対している主な理由に、以下のような理由があげられる。
三自愛教会は、
①政治色が強い
②利益集団と化している
Contents
①政治色が強いという面について
三自愛教会は教会そのものの名称で、実際、この教会は“両会”によって運営されている。
両会とは、
中国基督教三自愛国運動委員会(1950年設立)
中国基督教協会(1980年設立)
三自愛国委員会は、当時、西欧諸国主導であったキリスト教会運営を西欧依存から脱却し、中国人自らが教会を治め、養い、伝道することを原則に設立されたが、この両会の設立目的、及びその組織の主要な働きを見ても、政治色が強いことがはっきりと分かる。
両会の設立目的について
「独立した自主的な教会の原則(自治、自養、自伝)を目標とし、全国の神を信じる信徒、イェス・キリストこそが神であると信じる信徒を団結させ、導き、
国を愛し、キリストを愛し、栄光を神に帰し、人の益となる道を歩みます。そして、聖霊の導きのもと心を一つにし、聖書の真理に基づいて我が国の教会の規約制度を制定し、教会を建て上げます。社会主義国建設、及び調和した社会を実現させ、中国のキリスト教と社会主義社会の調和できるよう全国のキリスト教徒を導き指導します。」
三自愛国運動委員会の主要な働きについて
①政府の信仰の自由に関する政策に協力する
②全国のキリスト教徒が愛国精神をもって法律、法令を遵守できるよう教育する
③全国のキリスト教徒に積極的に社会主義国家の建設に参入するよう奨励する
④三自愛国の原則をキリスト教徒に教育し、健全なキリスト教会を建て上げる
以上のように、両会はキリストの教会を建て上げることを目標としてはいるものの、あくまでも、教会は共産党のもので、社会主義国家建設のためのツールとして用いられていることがわかる。
利益集団と化しているという面について
すべての三自愛教会がそうではないが、ある地方の三自愛教会の主任は腐敗しており、宗教事務局と密接につながっていて、その権益を活かし、宗教事務局の役人と娯楽に勤しむリーダーもいるといわれている。
ある家の教会のリーダーはこのような話をしている。
安徽省のある市の三自愛教会のリーダーは品行が悪く、それゆえ、そこにいた多くの信徒は三自愛教会を離れ、家の教会へ流出していった。結果的に三自愛教会に対する献金が減少し、そのリーダーは激怒。
そのリーダーは家の教会に対抗するために、市の宗教事務局に訴え、家の教会を取り締まるように要求し、地方政府によって、家の教会に対して取締りを実施することになったそうである。このような三自愛教会のリーダー主導の勝手な都合による、家の教会に対する弾圧も少なからず確認されており、もし、三自愛教会がなければ、政府が直面している宗教的な問題は大幅に減少されると言われている。
三自愛教会が中国の家の教会と政府とを衝突させている根源となっているため、上記、家の教会のリーダーは、政府に三自愛教会を解散するように要求している。
このように、政府の宗教政策の失敗は原因は、
①政府が三自愛教会への依存から抜け出せていない
②政府が三自愛教会に利用されていると側面がある
といった面にも見出すことができる。
以上、三自愛教会の負の面を見たが、もちろん、すべての三自愛教会が悪いわけではない。
三自愛教会の肯定的な側面
三自愛教会は、確かに政府主導の政治的な組織である面もあるが、三自愛教会が掲げている教義は聖書的で、その教えも福音的で、多くの正式な神学校を建設し、多くの福音的な教職者を生み出し、運営してきたと言われている。
三自愛国運動委員会の規約を見ても、決して非福音的な要素は見られない。
「本委員会は十字架に掛けられたイェス・キリストを掲げ、全国の教会がかしらなるキリストのうちに一つとなり、肢体なる各教会が共同でキリストの体を建て挙げ、福音のために証します。積極的に神学を構築し、全国の教会運営のために働き、共に礼拝し、その信仰と儀式において相互に尊重し、愛によって互いに忍び合い、平和の絆で結ばれて、聖霊による一致を保ち続けることを目標とします。」
ある家の教会のリーダーは、三自愛教会が設立されて以来、家の教会と三自愛教会の存在が相互に作用したことが、福音宣教に大きな影響を与えたと言っており、また、別のリーダーは、三自愛教会も神の教会で、その信徒は神の子であるため、互いに排斥し合ってはならないとも言っている。
このように、三自愛教会に対して、政治色が強すぎるとは言いつつも、肯定的な見方をしているリーダーも少なからずいるのも事実である。
※参考資料
基督教的发展与中国社会稳定—与两位“基督教家庭教会培训师的对话”
参考資料