サラリーマンが多い中国の家庭教会

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サラリーマンの牧師

私が通う家庭教会には、赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層の信者が集っています。

職業も一定の職業に集中しておらず、主婦、学生、大学院生、サラリーマン、医者、教師、弁護士など様々です。以前、農村部の家庭教会に多く見られた「三多」の現象は全く見られません。

三多とは、老人が多い、婦人が多い、非識字者が多いのこと。

男女比率で見ると、男性のほうが多く、特に成人男性が多いのが特徴です。そのため、この教会の未婚女性クリスチャンは、結婚相手を探すのに困らないという恵みを享受しています。

もちろん、この現象は教会内だけのことではありません。中国では男女比率が既に著しく失われており、中国社会全体にこの現象が見られるので、ここに中国社会の歴史的な要因があることは否定できません。

私は、この家庭教会に成人男性、特にサラリーマンが多い理由に、主任牧師自身がサラリーマンであるということが挙げられると思います。

この教会には五人(男性三名、女性二名)の主要な説教者がいますが、5人とも非職業的説教者で、男性は平日、営業マンやエンジニアーなど企業戦士として働いています。

いいところ

教役者自身がふたつの顔を持っていることの利点は、クリスチャンゆえに起こる会社内での困難、サラリーマンの苦悩や、また弱さを知り尽くしており、そのことが一般信徒のサラリーマンに対して、非常に行き届いた牧会の展開を可能にしていると思います。そして、それら経験、知識は牧会活動、説教などに顕著に現れています。

改革開放以降、市場原理が本格的に中国に浸透していく中で、株式会社も誕生し、株式投資をして一夜にして莫大な富を増やそうとする者、また、上昇し続ける不動産価格に目をつけ転売用にマンションを購入し、不動産に投資する者も多くいました。

しかし、その一方で、リーマンショック以降、株価や不動産価格の暴落で一夜にして多額の債務者になる者も現れてきました。このような一寸先は闇、先行き不透明な社会に不安を抱く中国人が増加してきています。

このような背景のもと、牧師は、まず「人間は何に投資すべきか」という切り口から、目に見える物への投資は頼りにならないということを例を挙げながら語ります。

さらに、物質への投資には不安がつきまとい、本当の平安は得られないと語った上で、聖書に戻り、イェスキリストが地上を離れる時、弟子たちに残していったものは金銭などの財産ではなく、「平安」であったと説明します。

そして、人間に必要なものはこの平安であり、この平安こそが最も価値のあるものでり、この平安を得るために人間は投資すべきである、という結論に至らせます。

では、「一体何を投資するのか」ということについては、献金などの金銭は一切語らず、ただ自分自身をキリストに投資、つまり、お捧げすることが大切と説明します。

また、全能の神よ、我らに祝福を注ぎたまえ的な功利主義的、極端な繁栄一辺倒の説教ではなく、「祝福がほしいから、神を信じる」という自己中心的な信仰でなく、神を信じるなら、祝福されると、あくまでも主客転倒を避けるように語っています。

また、投資以外には、時間は神が人間に平等に与えた贈り物という視点から、時間管理術を切り口に説教したりと、サラリーマンでも受け入れやすい説教を心がけているようです。

日ごろの業務の中で、株や証券など投資にかかわっている牧師が言うからこそ、聖書の真理に加えて、さらに説得力が増すのだと思います。

あくまでも理想ですが、この家の教会のように、例えば、1人のフルタイムの教職者が10の働きをするより、10人の信仰的な普通のサラリーマンがそれぞれ1の働きをするほうがより健康的な組織になりうるのかとも思ったりしました。

パウロは彼らのところに行ったが、互に同業であったので、その家に住み込んで、一緒に仕事をした。天幕造りがその職業であった。

カナンの地は今日も輝いています。