動物福祉
普段何気なく口にする食べ物がどこから、どのように来たのかを意識することはあまりありません。今口にしている肉や卵は人間のテクノロジーで無から有を生み出すようにできたのではなく、動物が産出、あるいは自らを捧げたものに違いないのです。近年、西洋諸国でアニマルウェルフェアという言葉が盛んに叫ばれるようになりました。動物福祉のことで、概ね動物を劣悪な環境で育てるのをやめようというもののようです。
ニワトリの雛はベルトコンベアに載せられ、不完全なものはピックアップされそのまま殺処分、あるいは生きたままでゴミ箱に放り込まれる業者もあるそうです。また、豚などの家畜は狭いエリアで区切られた場所に押し込まれ、体の向きを変えることもできずに目の前に出されるトウモロコシを食べ、太ってきたタイミングで殺されます。こういった劣悪な環境で育てずに、平地で開放的なところで育ててあげる。それが、動物の福祉だというそうです。
ビーガン
僕は普段そういったことは意識せずにご飯を食べています。肉には豊富なタンパク質が含まれているので、生きるためには動物にも犠牲になってもらわないといけない。食物連鎖の頂点に立った人間にはその権利があると思ってしまうかもしれません。しかし、僕のこの体を生かすためにそういった動物に血が流れる必要があるのかと問われればそうでもなさそうです。現在では、栄養失調で死ぬ確率よりも、肥満で死ぬ確率のほうが高いですし、成人男性が1日に接種すべきカロリーは限られており、動物の血が流されなくても人間は生きていけるのです。
じゃあ、ビーガンかベジタリアンになればいいのか!と言われたらそうでもないと思います。僕は中国にいる時に、一時期、ビーガンを目指しましたが、友人に焼き肉に連れて行ってもらった時にあっけなく終わってしまいました。よっぽどの強い信念や思想がない限りビーガンを続けることは難しいと思います。厳格なビーガンの場合、日本食の出汁も食べることはできません。友達と焼き肉に行った時に、食べないという強い意志があればできるかもしれませんが、食はあらゆるところに関連しており、人間関係や社会性にも影響が出そうです。
トップダウン
最近、スーパーなどでも平地で育てられた卵をみかけるようになりました。アニマルウェルフェアに基づいて育てられた卵だそうですが、いかんせん、値段が高いのです。食べ物ではないですが、先日、LOOPというプラスチック容器を使わずに指定の容器に入替えて配達してくれるサービスを知ったのですが、これもインスタントコーヒーが一袋500グラム800円ほどで市場価格の2倍しており、環境にはいいとわかっていても躊躇してしまいます。
環境に悪いことはわかっている。動物にも優しくないのはわかっている。しかし、背に腹は変えられない。できるだけ安く手に入れたい。という個人の気持ちが優先してしまうのだと思います。個人にできることから始めましょう。というはベストですが、ある程度、トップダウンで規制なり罰則なり設けないと、アニマルウェルフェアしかり、環境問題しかり、改善は難しいのではないかと思います。その点で、欧米諸国は一歩先を行っており、それがスタンダードになると、日本の畜産農家などは難しい立場に立たされるのではないかと思います。