0230_スマホが神になるを読んで

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「スマホが神になる」を読んで

先日、結構古めの本ですが「スマホが神になる」(島田裕巳著)という本を読みました。宗教学者である島田氏の書籍はおおむね目を通していて、中立的な立場で神道、仏教、イスラム教、キリスト教、各種新興宗教を分析していて非常に面白いです。

同書は、2016年に出版されていて、ポケモンGOがインストールされたスマホが各種宗教を信じる人たちにどのような影響があるのかなどを分析していて非常に面白かったのですが、いかんせん、ポケモンGO自体がオワコン感があるので、少し内容に古さを感じてしまいました。ただ、各種宗教の事情は分析は面白いので、興味のある方は手に取ってみてもいいかもしれません。

経済成長期に信徒も増加

同書によると、日本においては、ごく一部の宗教を除いて概ねこの数十年で大きく信徒数を減らしているそうです。戦後から高度経済成長期にかけて、都市部の発展を支えるために地方から多くの人が都市部に仕事を求めて押し寄せてきました。このような大勢の人が知らない土地で孤独の中で生きており、そういった人たちの心の支えとして、各種宗教は大きく信徒数を伸ばしたそうです。確かに今自分が所属しているコミュニティーも高度経済成長期に就職、結婚した人たち、そして、その子どもたちで構成されいるケースが多い気がします。

中国でキリスト教信徒が激増した背景には様々な要因があると言われていますが、中国もこの日本の状況と一致しています。中国の場合は改革開放政策で農村から農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者が都市部の発展を支えました。慣れない土地で都市部の発展から取り残された人たちも孤独でした。さらに以前勃発した文革では宗教が全面的に禁止されていた反動もあって、心の渇きは絶頂に達し、キリストの教えに人々が吸い寄せられていったのです。

イスラム教の特異性

ヨーロッパなどでは教会税8%~10%があり、若い人を中心に教会離れが顕著で、使われなくなった教会がモスクとして使われることもあるそうです。アメリカでも神の存在を信じている人は多いですが、教会に行っている人の人数は年々減少傾向にありますが、イスラム教などはヨーロッパや東南アジアなどで増加傾向にあるそうです。

イスラム教が増加している原因としては、イスラム教はキリスト教でいう通過儀礼である洗礼を受ける必要もなく、信仰告白をすればイスラム教になれます。また特定のコミュニティに属す必要はなく、ただ、5行と呼ばれる教えを実行すればいいのです。あらゆる場所にあるモスクにも特定のコミュニティーは紐づいておらず、誰でも来て礼拝をしていいそうです。

人間の本質は変わらない

結果を見ると、確かに経済成長期に特定の宗教にすがる人は多いのですが、人間の本質そのものは数千年前から何も変わっていない以上、これからも神という存在を求める人は減らないと思います。島田氏が指摘するようにスマホが神の代わりとなり、全能感やコミュニティーへの所属意識などを与えてくれるかもしれませんが、それは、ごまかしにすぎないと思います。自分をごまかしきれない空白が必ずあると思います。人間は、僕ももちろん、相変わらず、自己中心的です。それがすべての軋轢の原因だと思っています。

オフラインからオンラインへの過程を知っており、利便さを知っている世代はこのままスマホに夢中になるかもしれません。ただし、デジタルネイティブと言われるオンラインから入った世代は、「ごまかしきれない空白」をうめるべく、オフラインに回帰していくのではないかな、と勝手に思っています。