0084_「サピエンス全史」を破り捨てようかと身震いした

今更ながら、GW中にユヴァル・ノア・ハラリ氏の「サピエンス全史(上)」を読みました。数年前から、ビジネス書では上位ランキングを堅持してて、ずっと気になっていました。本を購入する前にハラリ氏について調べたところ、イスラエル人だったので、これは旧約聖書の思想をベースにした著書だと思い書評も読まずに購入を決めました。

本を開いて第一章の一行目の記述は衝撃でした。

今からおよそ135億年前、いわゆる「ビッグバン」によって、物質、エネルギー、時間、空間が誕生した。
「サピエンス全史(上)」ユヴァル・ノア・ハラリ

おそらく意図的に旧約聖書の創世記一章との対比を意識した一文だと思います。

はじめに神は天と地とを創造された。
創世記1章1説(口語訳)

以前の私だと進化論的主張の書物は絶対読みませんでしたが、これほどまでベストセラーになる原因を知りたかったので、そのまま読み続けました。上巻の内容をすべて網羅できませんが、下記にざっくり要約します。

人類は類人猿から進化した。遺伝子の突然変異によって、複雑な言語で意思疎通ができるようになった。狩猟採集民族は獲物を獲得するために、世界各地に散らばって行った。

次に、農耕民族になり、狩猟に出なくても麦などを栽培する技術を身に着けた。その代償として、下記リスクを背負うようになったが、見切り発車してしまった手前、引き返せなくなってしまった。

①天災、飢饉などによって、汗水流して長期間かけて育てた食料を一瞬で失うリスク
②その土地から離れられないリスク
③敵の襲撃によって一瞬にしてすべての穀物を盗まれるリスク

襲撃を避けるために、城壁を築いたり、余剰食物を備蓄できる倉庫を作った。労力の割には、栄養価の低い穀物しか栽培できなかった。さらに、余剰食物で生活する層と食物を生産する層などヒエラルキーが生まれた。

狩猟採集民族の集団規模は150名程度が限界だったが、農耕民族になることによって、人口が急激に増加した。そして、大規模の人口を統治するために「虚構」が必要となった。その虚構とは、宗教的な神話や物語から主義思想なども含まれます。

世界は、統治の都合により、集団が信じる「実際には存在しない虚構」により動いてきた。

特に身震いして、本を投げ飛ばしてやろうかと思った一文があります。ハラリ氏は、アメリカの独立宣言も虚構と一蹴し、生物学的な言葉で言い換えてしまいます。

アメリカの独立宣言(原文)
我々は以下の事実を自明のものと見なす。すなわち、万人は平等に造られており、奪うことのできない特定の権利を造物主によって与えられており、その権利には、生命、自由、幸福の追求が含まれる。

アメリカの独立宣言(生物学的な言葉で置き換え)
我々は以下の事実を自明のものと見なす。すなわち、万人は異なった形で進化しており、変わりやすい特定の特徴を持って生まれ、その特徴には、生命と、快楽の追求が含まれる。

彼の主張によると、人類は生物学において、生まれつき遺伝子は平等ではないし、ただ生きることと快楽の追求だけがあると述べます。進化論的な思想は同意できませんが、「集団が信じる虚構が世界と動かしてきたこと」などは、なるほどと思うところがありました。

彼が虚構と言おうが、キリスト教の信仰の真髄は、分析可能な見えるものにではなく、見えないものにあります。確かに人間は、生物学的にはDNAによって特定の特徴を持って生まれるものです。しかし、彼が虚構と一蹴する聖書にはこのように記載されており、僕は、彼のいう虚構を信じることによって、救われました。

それらの人は、血すじによらず、肉の欲によらず、また、人の欲にもよらず、ただ神によって生れたのである。
ヨハネ1:13(口語訳)

キリストにあるものはすべて新しく造られたものであること。そして、生物学的にではなく、神によって生まれたものということを信じます。