絶叫!ヒールで脚の爪を踏まれた時

2日前、湖北省から荷物が届きました。送り主は以前の学生である趙さんからでした。中身は彼女に貸していた日本語の本です。また、それといっしょに彼女の故郷の特産品が入っていました。

アヒルの喉
アヒルの手
アヒルの足
アヒルの心臓

周黑鸭というアヒルの各部位を販売しているお店が非常に有名で、確か東京にも日本第一号店がオープンしたと思います。激辛食品です。部位によってはエイリアンにしか見えない。
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彼女の優しさがアヒルの各部位を通して、伝わってきましたが、私は気持ちだけ頂くことにしました。2年の間、色々な学生を見てきましたが、彼女ほどインパクトの強い学生は、後にも先にも彼女ただ一人だけです。目をつぶると、今でも、あの強烈な地獄絵図が思い出されます。

2013年9月、事件は本当に些細なことから起きました。きっかけは私が放った一言です。

「趙さんと曹さん、昨日、教室内で昼寝している時、机から落ちたでしょう。事務所までどーんという音が聞こえてきましたよ。」

趙さんと曹さんがそのことについて言い合いを始めました。最初はただのかわいらしい女性同士の言い合いでした。

論点は、「机から落ちたのは私かあなたか。」どうしようもないくらいどうでもいいことです。

それが5分経っても、言い合いが収まりません。次第に論点がずれていきます。

曹さん
あんた、楊先生のこと好きでしょ!?だって、あんた先生の顔見ると、いっつも顔が真っ赤になるじゃない!!
趙さん
あんたに言われたくないわよ!!日本人のじじいに囲まれているくせに!!

互いに、口々に罵声を浴びせ合っていましたが、私と他の学生は、いずれ収まるだろうと笑いながら様子を見ていました。

しかし、数分後、悲劇が起こります。

既に、気づいた時には趙さんの眼鏡が吹っ飛んでいました。取っ組み合いが始まっていた。急いで止めに入ります。

お互いがお互いの髪の毛を掴んでいるため、なかなか離れません。制止できるどころか、急に私の足に激痛が走りました。そうです。趙さんがハイヒールで私の左親指の爪を思いっきり踏みつけました。

わたしは頭の上に星がいくつか見えて、ふらふらになり、制止する力がなくなりました。それから、異常に気づいた男性の先生も集まってきて、男性3人がかりで制止し、なんとか、二人を引き離しました。

引き離された後も、学校の廊下に女性の泣き声と叫び声が響き渡ります。他の学生も現場に集まって来ていました。現場には大量の髪の毛が散乱し、趙さんは顔から流血、曹さんは頭に大きなたんこぶができていました。

その後、警察に連絡し、曹さんはMRIを取りに病院へ行き、趙さんは事務所で応急処置を施しました。ちなみに、私は左親指の爪が破損し内出血していました。

その後、数名の先生が間を取り持ち、二人に和解を促したようですが、結局、二人は仲直りしないまま、別々のクラスで勉強を続けることになりました。

二人は本当は優しい学生たちです。
授業中、「今、何がいちばんしたいですか。」という質問に対して、

趙さん
困っている人を助けたいです。

「今、何がいちばん欲しいですか。」という質問に対して、

趙さん
よみほんが欲しいです。
と珍回答。彼女が言いたかったのは、「勉強がしたいです。」の一言だったようです。

善意と向上心に溢れていた二人ですが、ほんの些細なことで、仲たがいしてしまいました。誰も好きで争いや喧嘩をしたい人なんて、いないはずです。

聖書ははっきりとこう言います。

そこで、この事をしているのは、もはや私ではなく、私のうちに宿っている罪である。

罪を憎んで人を憎むな。

この気持ちを忘れず、これからも、もっとたくさんの人を知りたい。山積みになったアヒルの各部位を眺めながら、ふと、そんなことを思いました。

カナンの地は今日も輝いています。

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