0010_プレス機に身を委ねれば

僕は大学卒業後、営業職希望で中小企業のメーカーに就職しました。ただ、リーマンショック後の大幅な需要減で、人事部の方に無慈悲にも「営業はいらないよ」と言われ、工場勤務になりました。

工場は現代版蟹工船さながらの過酷な環境でした。殴る、蹴る、走らせる、正座させる、などは当たり前で、深夜残業までさせて、生産性を向上させるような工場でした。僕は、神様の守りがあって、パワハラの対象になることはなく、自分で言うのもなんですが、みんなに好かれてたと思います。(笑)

「ものづくりを知らない人に営業はできない」と言われ、約1年間、様々な工程を経験させていただきました。金型でのプレス加工、通電を確認する電気チェッカー、表面加工処理などです。工場では生産性が最優先事項です。生産性向上が低コスト、歩留まりの上昇、短納期に直結します。

その中で、金型プレス加工は忘れられません。プレス加工はお客様の仕様に合った金型で資材を加工して、任意の形に整形する工程です。作業は非常に簡単で、下記のような単純作業をひたすら繰り返します。

  1. エアーで粉塵を除去する
  2. プレス機に資材を置く
  3. 両手でプレスボタンを押す
  4. 金型が下降して資材をプレスする
  5. 金型が上昇して元の位置に戻る

何トンという重力を資材に加えるので、プレスする度に雷が落ちたような音がします。ですので、難聴防止のために耳栓は必須です。両手でプレスボタンを押すのはセキュリティのためです。工場には左手の第二関節から先がないおじちゃんもいました。。蟹工船系工場、かつ新入社員が作業を変えてくれとも言えないので、やれと言われれば、やらなければなりません。

はじめは恐怖、そして、抵抗。抵抗しても無駄だとわかると受容が始まります。そして、だんだん、あれ!これ面白いかも!!って思うようになり、作業の最適化を追求し始めました。

品質の維持と高速化はトレードオフの関係にあり、念入りにエアーをすると粉塵はなくなりますが、時間がかかります。一方で、軽めにすると粉塵が残ったままになり、プレスすると加工品にプレス打痕ができて歩留まりが落ちてしまいます。

ある一定まで最適化を求めると数字が頭打ちになりますが、僕は、その中でも数字を最大限まで上昇させる裏技を発見しました。

よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。
ヨハネ12:24(口語訳)

そうです。自分に死んで、プレス機に身をゆだねればいいのです。

単純作業がどうのこうのとか、毎日8時間ずーとこれとか、まだ2時間しか経過してないじゃないか、とかそういった愚痴からは何も生まれません。ありのままを受け入れ、自分に死に、プレス機と一体化すれば、ゾーンに入り、通常では得られない生産性を得ることができます。そのおかげで、蟹工船の監督にも、この新入社員は早いと言ってもらえたほどです。(笑)

日々、プレス機じゃなくて、神様に身を委ねます。