クリスチャンミュージックについて
クリスチャンミュージックというジャンルがありますが、その定義はわりと難しいようです。まずクリスチャンという言葉は、ギリシャ語で「キリストのような者」という意味だそうです。さらに新約聖書の使徒行伝の記述によると、当時の弟子たちが自発的に「俺たちクリスチャン!」と宣言してたわけではなくて、周りの人たちに「こいつらは俺たちと違ってキリストみたいなやつらだ!」といわしめていたようです。つまり、クリスチャンとは、キリストが歩いた道を歩き、かつキリストのような品性や徳を兼ね備えた人たちをさすようです。ですから、洗礼を受けただけで、胸を張って「オレ、クリスチャン!」と公言するするのははばかれそうな気がします。
そして、クリスチャンミュージックについては、直接、神様を褒め称えるワーシップソングや神様について歌うゴスペルソングなど、いわゆる、キリスト教感がはっきりしているものから、歌詞や曲にさりげなく聖書やキリスト教徒の精神性が現れているもの、また一見するとキリスト教感ほぼゼロのものまで実に様々です。ただ、唯一の共通点は下記にあるようです。
共通した特徴は、歌詞カードの『SPECIAL THANKS(感謝をささげる人々)』欄の最初に『GOD(神)』を書き込むことである。
これは、すごくわかりやすいです。さらに、ジャンルに関しては、クリスチャン・ロックに対して否定的なキリスト教宗派もあるようですが、個人的にはジャンルはあくまでも好みであり、表現方法である思っています。それぞれに、好きなお笑い芸人が違うように「好み」の問題なのかなと思ったりします。その中で万人受けするものもあったり、コアな人たちだけが好むものがあったりするんだと思います。なぜ、こんな話をしたかと言いますと、ご紹介するクリスチャンバンドがゴリゴリのハードコアバンドだからです。
Emery(エメリー)について
Emeryはアメリカのサウスカロライナ州出身のポスト・ハードコア、スクリーモ、エモ、オルタナティブのクリスチャンロックバンドです。2000年からインディーズで活動を開始し、メンバーを少し変えながら、現在に至るまで活動を続けています。これまでに6枚のアルバムをリリースしています。クリスチャンレーベルであるトゥースアンドネイルレコード(Tooth & Nail Records)やソリッドステートレコード(Solid State Records)に所属していた時期がありますが、今は、独自レーベルを立ち上げています。
自己レーベル以外のアルバムはすべてシャウト(スクリーム)が前面に強く押し出されている激しい曲が多いため、人によっては「うるさい」と感じるかもしれません。Emeryの特徴はヴォーカルであるトビー(Toby Morrell)とデビン(Devin Shelton)のエモーショナルで甘美な歌声のハーモニーにあります。当初からずっとリードギターを担当しているマット(Matt Carter)のギターも独自性がはっきりとしており、曲を聞くとEmeryとわかる曲が多いです。
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— Emery (@OfficialEmery) 2017年3月18日
リリースされたアルバム
- The Weak’s End (2004)
- The Question (2005)
- I’m Only a Man (2007)
- …In Shallow Seas We Sail (2009)
- We Do What We Want (2011)
- You Were Never Alone (2015)
楽曲について
「You Were Never Alone」(2015)に収録されている「The Less You Say」です。このアルバムに収録されているすべての曲は聖書のいずれかの物語にインスピレーションを受けて作曲されています。イェス・キリストがゲッセマネの園で、裏切り者のユダやその従者たちに捕縛されようとした時に、ペテロがイェス・キリストを守った時の聖書の話を歌っているそうです。哀メロなギターイントロとトビーとデヴィンの美麗ハーモニーが豊潤な形で結晶しています。物語性のある奥行きのある曲です。
The Less You Say
2010年に当初所属していたレーベルから出されたクリスマスソングアルバムに収録されている「Jesus Gave Us Christmas」という曲です。さらに、2015年独自レーベル立ち上げ後に「Emery Christmas EP」として、Emeryのクリスマスソングを収録したアルバムがリリースされています。歴史上、人類にとって最も美しい奇跡的な夜の出来事を歌った曲です。
きょうダビデの町に、あなたがたのために救主がお生れになった。このかたこそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである」。
Jesus Gave Us Christmas
スクリームサウンドと現在
上記では紹介しませんでしたが、Emeryは、当初からスクリーモバンドとして有名で、メタリックな重厚サウンドやポストハードコアらしい激しさを持っています。ただ、ここ数年でリリースされている曲は非常に落ち着きのある曲が多いです。
2011年にヴォーカル兼ベースのデヴィンが抜けたあと、目立った活動はしていなかったようですが、2015年に再びデヴィンが戻ってきてから活動が再び活発になり、アコースティックでしっとり歌う曲が増えました。2017年にはヴォーカルのトビー(Toby Morrell)がワーシップの楽曲「Forever Rain」を独自レーベル(Bad Christian)からリリースしました。Bad Christianは、従来からあったトビーやマットのブログからアップデートし、2013年からWebサイトが立ち上げられる形で誕生しました。今では専用アプリもリリースされており、音楽だけでなく書籍も出版しています。なぜ、バッドクリスチャンという名前になったのかは不明です。
Physical copy of “badchristian GreatSavior” books are back in. $10. Act now/get TWO for $20! http://t.co/Y6cvNIKfHx pic.twitter.com/GzQqNmGiYO
— BADCHRISTIAN (@badchristianpod) 2015年5月24日
「Forever Rain」は、サビの天に突き抜けるようなメロディーが美しいです。トビーの優しい透明感のある歌声と表情が最高です。相変わらずの感受性豊かな感じと個性豊かなキャラクターもすごくいいです。PVに登場する人物は全員トビーで要所要所にちょっとおふざけが入っているように思います。PVの途中でトビーが渡した新約聖書の詩篇をゴミ箱に捨てられてしまうというワーシップソングのPVらしくないところもありますが、救いの雨を待ち望む非常に霊的な楽曲です。
あなたがたは自分のために正義をまき、いつくしみの実を刈り取り、あなたがたの新田を耕せ。今は主を求むべき時である。主は来て救いを雨のように、あなたがたに降りそそがれる。
Forever Rain
最後にファーストアルバム「The Weak’s End」 (2004)の1曲目に収録されていた「Walls」のアコースティックライブバージョンと当初のスクリーモバージョンを紹介して終わります。アコースティックバージョンはオルタナ色が存分に生かされた感じに仕上がっています。スクリーモバージョンはトビーとデヴィンの掛け合いのコーラスとストーリー性のある曲全体の構成が聴きどころです。
Walls
- EmeryオフィシャルWebサイト
- Bad ChristianオフィシャルWebサイト
- EmeryオフィシャルTwitter
- Bad ChristianオフィシャルTwitter
- wikipedia Emery