おととい、何者かに部屋の鍵穴を勝手に交換される事件が起こってから、今日に至るまで、何事もなく平穏に過ごせています。
それでも、しばらくは安心できず、不安はぬぐいきれないので、帰宅後は、すぐに、細心の注意を払いながら、風呂場、クローゼット、ベランダを確認するようにしています。
中国では、「あり得ないことがあり得ない」ので、暗闇にまぎれて部屋の中に、何者かが潜んでいる可能性も排除できません。しばらくは、警戒し続けるの生活が続きそうです。
私の住んでいる東莞は、以前から治安が悪い町として有名です。
中国へ来る前も、この事実は知っており、治安が悪いことを承知でここへ来ましたが、先日の一件があるまでは、特に治安に関してだけ言えば、平穏そのものだったので、本当に驚きを隠しきれませんでした。
しかし、最近、立て続けに、私の周りにいる人たちが、様々な犯罪に巻き込まれています。先週の日曜日、私と同じマンションに住む中国人の同僚は、バスに乗っている時に、かばんの中から財布と携帯を盗まれたそうです。
盗まれたことに気づき、急いで銀行へ行き、キャッシュカードの利用停止手続きをしたそうですが、その時には、既に預金の1,000元は無くなっていたそうです。
昨日は、夜中に友人の家に泥棒が押し入り、彼は泥棒の前になすすべなく、パソコンや現金などの貴重品を奪われたそうです。
携帯を店内に置き忘れてしまい、店員に盗まれてしまうような話は、何度も聞いたことがあります。悲しいかな、私の周辺では、泥棒に入られたり、何かを盗まれたりすることが、既に日常化してしまっています。
私もどんくさくて、先週の日曜日、友人と日本料理屋で食事をした際、私は電子辞書を日本料理屋へ置き忘れてしまいました。
そのことに気づいた時は、既に夜遅く、その店の電話番号も知らず、すぐに確認が取れなかったため、気づいてからは、いてもたってもいられず、気が気じゃありませんでした。
というのも、その辞書は私が中国へ行く前に、ある人からもらったものであり、金銭以上の価値があるものでした。
ちなみに中国で何かを置き忘れ、紛失した際の回収率は、私が今までに聞いた話で判断すれば、0パーセントです。
授業中に、ある文型を教える際、教科書の内容に沿って、「もし、電車に携帯を置き忘れてたら、どうしますか」という質問を毎回、学生に投げかけます。
模範解答は、
「警察に連絡します。」や、
「駅の係員に探してもらいます。」などですが、
学生は口をそろえて、「諦めます」とだけ言います。
失くした側はもちろん災難ですが、拾った側も対応に困るそうです。彼らの話によると、たとえ警察に届けたとしても、紛失物を受理した警察官が私物として回収してしますそうです。
もちろん、すべての警察がそうだとは思いませんが、そのような警察官がいるそうです。
このような、ほぼ絶望的な状況の中、翌日は、香港から帰ってきてから、すぐにその店へ足を運びました。
店の近くに近づくと、店の前に二人の店員さんが立っていました。
そのうちの一人が私を認めると、すぐに店内へ入って行きました。
私が、店の前に立っているもう一人の店員さんに、電子辞書を置き忘れたことを伝えていると、先ほど、店内に入って行った人が戻って来て、私に電子辞書を手渡してくれました。
一瞬、何が起こったのか自分でも理解できませんでした。
今年、中国へ戻ってきてから、いちばん嬉しかったことです。
暗闇の中に輝く一条の光を見た気がしました。
わたしは電子辞書を強く抱きしめ、足早にバベルの塔へ向かった。
「順境の日には楽しめ、逆境の日には考えよ。神は人に将来どういうことがあるかを、知らせないために、彼とこれとを等しく造られたのである。」
引用元
カナンの地は今日も輝いています。